「成年後見制度を勧められたけど、本当にそれでいいの?」
「家族信託って聞くけど、よく分からない」
「任意後見は“まだ早い”と言われたけど、いつ考えるべき?」
親の物忘れや判断力の低下が気になり始めたとき、多くの家族が “制度の分かれ道” に立たされます。
でも実際には——
制度ごとに、向いているタイミングも、重さも、自由度も全く違います。
この記事では、
成年後見制度・家族信託・任意後見 の3つを、「家族が後悔しにくい視点」で比較していきます。

まず結論:制度に「優劣」はありません
最初に、いちばん大切なことをお伝えします。
👉 どの制度が正解か、という答えはありません。
👉 「今の親の状態」と「家族が何を守りたいか」で選びます。
その前提で、それぞれを見ていきましょう。
① 成年後見制度(法定後見)|強力だけど、いちばん“重い”
● どんな制度?
すでに判断能力が低下した後、家庭裁判所が後見人を選び、親の財産や契約を法的に守る制度です。
● メリット
- 詐欺や不当契約を取り消せる
- 家族間トラブルが起きにくい(第三者が入るため)
- 財産管理が非常に厳格
- 「身上監護(施設契約や入院手続き)」の代理権がある
● デメリット(要注意)
- 一度始めると、原則やめられない
- 家族でも自由にお金を動かせない
- 毎月の後見人報酬がかかる場合がある(専門職の場合)
- 家庭裁判所の関与が一生続く
👉 「守る力は最強、自由度は最小」
それが成年後見制度です。
● 向いているケース
- すでに判断能力が大きく低下している(認知症が進んでいる)
- 詐欺・契約トラブルが現実化している
- 財産が多く、管理が複雑
② 家族信託|柔軟だけど、設計がとても重要
● どんな制度?
親が元気なうちに、財産管理を家族(信頼できる子など)に託す契約を結ぶ制度です。家庭裁判所は介入せず、契約内容に沿って家族が管理します。
● メリット
- お金の使い道を柔軟に決められる(孫への教育資金など)
- 不動産の売却や管理に強い(共有名義の解消など)
- 成年後見より自由度が高く、裁判所の報告義務がない
● デメリット
- 判断能力があるうちしか契約できない
- 初期費用が高額になりやすい(数十万円〜)
- 「身上監護権」がない👉 施設入居や入院の契約代理権は持てないため、別途対策が必要なことも。
👉 「財産管理の自由度は高いが、万能ではない」
のが家族信託です。
● 向いているケース
- 親の判断能力がまだ保たれている
- 不動産があり、将来の売却や管理を任せたい
- 家族関係が良好で、揉める心配が少ない
③ 任意後見制度|いちばん“準備型”の制度
● どんな制度?
親が元気なうちに、「将来、判断能力が低下したらこの人に任せる」と 公正証書で契約しておく 制度です。
実際に後見が始まるのは、判断能力が低下し、家庭裁判所が認めた後です。
● メリット
- 親の意思を反映できる
- 後見人(支援してくれる人)を自分で選べる
- 将来への安心材料になる
● デメリット
- 契約時に判断能力が必要
- 実際に機能するのは「将来」
- 開始後は「監督人」がつく👉 家族が後見人になっても、その働きをチェックする「監督人(弁護士等)」が必ずつき、その報酬が発生します。
👉 「今は元気。でも将来の“もしも”を予約する」
そんな家庭向けの制度です。
● 向いているケース
- 親が制度理解できる状態
- 「自分がボケたら、娘に任せたい」という意思がはっきりしている
- おひとり様で、頼れる親族がいない場合など
④ 3制度を一目で比較すると
| 観点 | 成年後見(法定) | 家族信託 | 任意後見 |
| 使える時期 | 判断能力低下後 | 判断能力があるうち | 判断能力があるうち |
| 自由度 | 低い(厳格) | 高い(柔軟) | 中(契約による) |
| 家裁の関与 | あり(強い) | なし | 開始後にあり |
| 身上監護 | できる | 原則できない | できる |
| 向いている人 | すでに困っている | 不動産・資産管理重視 | 将来の安心準備 |
PSWの視点:いちばん大事なのは「今どの段階か」
相談の現場でよく起きるのが、
👉 「困ってからでは、選択肢が狭まっている」 というケースです。
- 「もっと早ければ、家族信託で不動産対策ができた」
- 「もう少し早ければ、任意後見で本人の希望を残せた」
でも、認知症が進行しきった後に気づくと、選択肢は「成年後見(法定後見)」一択になってしまうことがあります。
だからこそ、
👉 「今はまだ大丈夫」と思っている段階こそ、情報を知る価値があります。
🌈 まとめ
成年後見・家族信託・任意後見は、
**親の人生と家族の安心を守るための“道具”**です。
- 強く守る・身上監護も必要 → 成年後見
- 柔軟に資産を管理したい → 家族信託
- 将来に備えて人を決めておく → 任意後見
どれを選んでも、「知って選んだ」こと自体が、後悔を減らします。
これらの制度は複雑で、法改正や運用も変わることがあります。
もし迷ったら、
- 地域包括支援センター
- 病院のPSW
- 司法書士・弁護士(特に成年後見や信託に詳しい先生)
に相談しながら、親と家族、両方にとって無理のない形を探していきましょう。



コメント