#05 「親にイライラしてしまう」
~介護疲れを乗り越える 5つの心構え~

福祉のヒント

「親に優しくしたいのに、どうしてもイライラしてしまう…」
「怒りたくないのに声を荒げてしまう」
「介護がつらくて、もう限界かもしれない…」

介護の相談を受けていると、
こうした言葉を涙ながらに話すご家族が少なくありません。

でも、まず知ってほしいのは——
イライラしてしまうのは“あなたが悪いからではない”ということ。

介護は、体力・時間・気持ちのすべてを使い続ける「長距離マラソン」。
誰でも途中で苦しくなる場面があります。

この記事では、
高齢者介護施設の相談員としての経験
精神科PSWとしての視点 を合わせて、

介護疲れを軽くするための 5つの心構え をお伝えします。


① イライラは「悪い感情」ではなく、心のSOS

多くの人は「親にイライラするなんて…」と自分を責めてしまいます。

でも、イライラは心の異常ではなく
あなたの心が限界に近づいているサイン です。

  • 自分の時間がない
  • 眠れない
  • 先が見えない
  • 感謝されない
  • 役割が重すぎる

こんな環境で誰もが冷静ではいられません。

まずは
「イライラしてしまう自分=当たり前」 と認めてあげてください。

罪悪感が少し薄れるだけで、心が少し軽くなります。


② すべてを一人で抱え込まない。「手放していい部分」を見つける

介護を頑張る人ほど、
「自分がやらなきゃ」「迷惑をかけられない」
という思いが強くなります。

でも、その責任感が “介護疲れ” の最大の原因です。

相談員として多くの家族を見てきましたが、
介護は一人で背負うものではありません。

以下の部分は「誰かに任せていい部分」です。

  • 排泄介助
  • 入浴
  • 食事の見守り
  • 通院の付き添い
  • デイサービスの利用
  • 福祉用具の調整
  • ケアマネへの相談

介護保険サービスは、
あなたの負担を軽くするために存在しています。

“手放せるところ”を少しでも見つけましょう。


③ 気持ちが限界なら「距離をとる」ことも支援のひとつ

精神的に追い詰められているとき、
介護を続けるだけでさらに状況が悪化することがあります。

PSWとして伝えたいのは、
「距離をとること=逃げること」ではない ということ。

● 数時間、外に出る
● デイサービスにあずけて休む
● ショートステイを利用する
● 他の家族に頼む
● ケアマネに支援を相談する

介護から一歩離れる“休息の時間”は、
長く介護を続けていくための大切な技術です。

むしろ、
自分を守れる人ほど、介護を続けやすい。


④ 「完璧な介護」よりも「安全で穏やかな時間」を目指す

介護に正解はありません。
もっと言えば、
完璧な介護など存在しません。

  • いつも優しく接しなきゃ
  • 毎日ちゃんと見ていなきゃ
  • すべて完璧にしなきゃ

そんな風に思うほど、苦しさは増えていきます。

大切なのは、
“できる範囲で安全に過ごせること”
そして
“少しでも穏やかに過ごせる時間を作ること”

介護の質は「あなたの愛情」だけで決まりません。
制度・サービス・環境の整え方で変わります。

肩の力を抜いて、
その日の自分ができる介護をすれば十分です。


⑤ 自分の感情を言葉にする場所を作る

介護家族が一番追い詰められるのは、
“「誰にも言えない孤独」”です。

相談員として感じるのは、
「話せる場所」があるだけで
介護はずっと楽になります。

  • ケアマネ
  • デイサービス職員
  • 病院のPSW
  • 家族会
  • 行政の介護相談窓口
  • 友人
  • SNSのコミュニティ

どこでも構いません。
あなたの気持ちを“吐き出せる場所”を確保してください。

言葉にするだけで、心の重さがふっと軽くなることがあります。


🌈 まとめ

親にイライラしてしまうのは、
あなたが弱いからではありません。

介護がそれほどまでに大変だから。
あなたが本気で向き合っているから。

大切なのは、

  • 自分を責めないこと
  • 一人で抱えないこと
  • 完璧を目指さないこと
  • 休むこと
  • 誰かに話すこと

この5つの心構えを意識するだけで、
介護の見え方が変わり、負担は大きく減ります。

あなたは十分に頑張っています。
どうか自分自身の心も、大切にしてあげてくださいね。

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