#10 家族が「心の病気」になったらどうする?
~共倒れしないための距離感とサポートのコツ~

医療のヒント

「どう接すればいいのかわからない」
「励ましたいのに、かえって悪くしている気がする」
「自分が先に壊れてしまいそう…」

家族が心の病気になったとき、
多くの方が “正解のない役割” を一人で背負い込んでしまいます。

精神科PSWとして、また家族支援に関わる中で、
私は何度もこんな言葉を聞いてきました。

「支える側なのに、弱音を吐いてはいけない気がして…」

まず、はっきりお伝えしたいことがあります。
支える家族が疲れてしまうのは、当然のことです。

この記事では、
家族が「心の病気」になったときに
共倒れにならず、長く関われるための距離感とサポートのコツ
やさしく整理してお伝えします。


① 「治してあげなきゃ」と思いすぎない

家族が苦しんでいる姿を見ると、
どうしてもこう思ってしまいます。

  • 何とかして元気にしてあげたい
  • 自分が頑張れば良くなるはず
  • 支えが足りないのではないか

でも、心の病気は
家族の頑張りだけで治るものではありません。

治療の主体は

  • 本人
  • 医師
  • 支援者

家族の役割は、
👉 「治す人」ではなく「そばにいる人」 です。

ここを勘違いすると、
家族はあっという間に疲れ切ってしまいます。


② 正しい距離感は「冷たさ」ではない

よくある誤解が、
距離をとる=見捨てる という考え方。

でも実際は逆です。

  • 何でも先回りしてやってしまう
  • 感情をすべて受け止め続ける
  • 24時間気を張り続ける

こうした関わり方は、
家族の心を確実にすり減らします。

大切なのは、
「できること」と「できないこと」を分けること。

例として――

  • 通院の付き添いはする
  • 生活のすべては背負わない
  • 感情のぶつけ先にはならない

👉 これは「冷たい」のではなく
👉 “続けるための距離” です。


③ 「どう声をかけるか」より「どう聴くか」

家族が一番悩むのが、
声のかけ方です。

でも実は、
正解の言葉を探す必要はありません。

避けたい言葉

  • 「気の持ちようだよ」
  • 「みんな頑張ってる」
  • 「前向きに考えよう」

代わりにおすすめなのは、

  • 「つらいんだね」
  • 「今はしんどい時期なんだね」
  • 「話してくれてありがとう」

👉 解決しなくていい。理解しようとする姿勢
それだけで、本人は十分救われます。


④ 家族自身の「限界サイン」を見逃さない

PSWとして強くお伝えしたいのは、
家族の不調は、とても見逃されやすい ということ。

こんなサインが出ていたら要注意です。

  • 眠れない
  • 食欲がない
  • 常に緊張している
  • イライラが増えた
  • 何も楽しく感じない
  • 誰にも相談できていない

👉 これは 「支える側のSOS」 です。

家族が倒れてしまえば、
結果的に当事者もさらに不安定になります。


⑤ 「一人で支えない仕組み」を早めに作る

共倒れを防ぐ最大のポイントは、
支援を“分散”させることです。

家族だけで抱えず、
次のような支援を早めに検討してください。

  • 主治医への家族相談
  • 病院のPSW
  • 相談支援専門員
  • 家族会
  • 地域の相談窓口

👉 「まだ大丈夫」と思っているうちに
👉 相談していい のが、心の病気の支援です。


⑥ 「あなたの人生」も、同じくらい大切

支援の現場で、
とても印象に残っている言葉があります。

「この子の人生のために、
自分の人生は後回しでいいと思っていました」

でも、支援は 犠牲の上に成り立つものではありません。

  • あなたが休むこと
  • あなたが笑うこと
  • あなたが助けを求めること

これらはすべて、
当事者にとってもプラスになる行動です。


🌈 まとめ

家族が心の病気になったとき、
正解を探そうとすると、必ず苦しくなります。

大切なのは――

  • 治そうとしすぎない
  • 距離をとることを怖がらない
  • 聴くことを大切にする
  • 自分の限界を知る
  • 一人で抱え込まない

あなたが「しんどい」と感じているなら、
それは もう十分頑張ってきた証拠 です。

支えるあなた自身が守られてこそ、
支援は続いていきます。

どうか、
あなた一人で背負わないでください。

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