#17 成年後見?家族信託?任意後見?
~親のお金と暮らしを守る制度の違いを、家族目線で整理します~

福祉のヒント

「成年後見制度を勧められたけど、本当にそれでいいの?」

「家族信託って聞くけど、よく分からない」

「任意後見は“まだ早い”と言われたけど、いつ考えるべき?」

親の物忘れや判断力の低下が気になり始めたとき、多くの家族が “制度の分かれ道” に立たされます。

でも実際には——

制度ごとに、向いているタイミングも、重さも、自由度も全く違います。

この記事では、

成年後見制度・家族信託・任意後見 の3つを、「家族が後悔しにくい視点」で比較していきます。


まず結論:制度に「優劣」はありません

最初に、いちばん大切なことをお伝えします。

👉 どの制度が正解か、という答えはありません。

👉 「今の親の状態」と「家族が何を守りたいか」で選びます。

その前提で、それぞれを見ていきましょう。


① 成年後見制度(法定後見)|強力だけど、いちばん“重い”

● どんな制度?

すでに判断能力が低下した後、家庭裁判所が後見人を選び、親の財産や契約を法的に守る制度です。

● メリット

  • 詐欺や不当契約を取り消せる
  • 家族間トラブルが起きにくい(第三者が入るため)
  • 財産管理が非常に厳格
  • 「身上監護(施設契約や入院手続き)」の代理権がある

● デメリット(要注意)

  • 一度始めると、原則やめられない
  • 家族でも自由にお金を動かせない
  • 毎月の後見人報酬がかかる場合がある(専門職の場合)
  • 家庭裁判所の関与が一生続く

👉 「守る力は最強、自由度は最小」

それが成年後見制度です。

● 向いているケース

  • すでに判断能力が大きく低下している(認知症が進んでいる)
  • 詐欺・契約トラブルが現実化している
  • 財産が多く、管理が複雑

② 家族信託|柔軟だけど、設計がとても重要

● どんな制度?

親が元気なうちに、財産管理を家族(信頼できる子など)に託す契約を結ぶ制度です。家庭裁判所は介入せず、契約内容に沿って家族が管理します。

● メリット

  • お金の使い道を柔軟に決められる(孫への教育資金など)
  • 不動産の売却や管理に強い(共有名義の解消など)
  • 成年後見より自由度が高く、裁判所の報告義務がない

● デメリット

  • 判断能力があるうちしか契約できない
  • 初期費用が高額になりやすい(数十万円〜)
  • 「身上監護権」がない👉 施設入居や入院の契約代理権は持てないため、別途対策が必要なことも。

👉 「財産管理の自由度は高いが、万能ではない」

のが家族信託です。

● 向いているケース

  • 親の判断能力がまだ保たれている
  • 不動産があり、将来の売却や管理を任せたい
  • 家族関係が良好で、揉める心配が少ない

③ 任意後見制度|いちばん“準備型”の制度

● どんな制度?

親が元気なうちに、「将来、判断能力が低下したらこの人に任せる」と 公正証書で契約しておく 制度です。

実際に後見が始まるのは、判断能力が低下し、家庭裁判所が認めた後です。

● メリット

  • 親の意思を反映できる
  • 後見人(支援してくれる人)を自分で選べる
  • 将来への安心材料になる

● デメリット

  • 契約時に判断能力が必要
  • 実際に機能するのは「将来」
  • 開始後は「監督人」がつく👉 家族が後見人になっても、その働きをチェックする「監督人(弁護士等)」が必ずつき、その報酬が発生します。

👉 「今は元気。でも将来の“もしも”を予約する」

そんな家庭向けの制度です。

● 向いているケース

  • 親が制度理解できる状態
  • 「自分がボケたら、娘に任せたい」という意思がはっきりしている
  • おひとり様で、頼れる親族がいない場合など

④ 3制度を一目で比較すると

観点成年後見(法定)家族信託任意後見
使える時期判断能力低下後判断能力があるうち判断能力があるうち
自由度低い(厳格)高い(柔軟)中(契約による)
家裁の関与あり(強い)なし開始後にあり
身上監護できる原則できないできる
向いている人すでに困っている不動産・資産管理重視将来の安心準備

PSWの視点:いちばん大事なのは「今どの段階か」

相談の現場でよく起きるのが、

👉 「困ってからでは、選択肢が狭まっている」 というケースです。

  • 「もっと早ければ、家族信託で不動産対策ができた」
  • 「もう少し早ければ、任意後見で本人の希望を残せた」

でも、認知症が進行しきった後に気づくと、選択肢は「成年後見(法定後見)」一択になってしまうことがあります。

だからこそ、

👉 「今はまだ大丈夫」と思っている段階こそ、情報を知る価値があります。


🌈 まとめ

成年後見・家族信託・任意後見は、

**親の人生と家族の安心を守るための“道具”**です。

  • 強く守る・身上監護も必要 → 成年後見
  • 柔軟に資産を管理したい → 家族信託
  • 将来に備えて人を決めておく → 任意後見

どれを選んでも、「知って選んだ」こと自体が、後悔を減らします。

これらの制度は複雑で、法改正や運用も変わることがあります。

もし迷ったら、

  • 地域包括支援センター
  • 病院のPSW
  • 司法書士・弁護士(特に成年後見や信託に詳しい先生)

に相談しながら、親と家族、両方にとって無理のない形を探していきましょう。

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