#9 「障害者手帳」を持つとどうなる?
~取得のメリット・デメリットと“申請のタイミング”~

医療のヒント

「障害者手帳って、取ったほうがいいんでしょうか?」
「一度取ったら、もう普通に戻れない気がして…」
「周りにどう見られるかが不安です」

精神科PSWとして相談を受けていると、
手帳の話題は、ほぼ必ずと言っていいほど“迷い”とセットで出てきます。

それもそのはずで、
障害者手帳は「支援の入り口」である一方、
“自分にレッテルを貼るようで怖い”制度でもあるからです。

この記事では、

  • 障害者手帳を持つと何が変わるのか
  • メリットとデメリット
  • どんなタイミングで考えればいいのか

を、不安を煽らず、判断できる材料として整理します。


① 障害者手帳って、そもそも何のためのもの?

障害者手帳は、
「あなたが困っていることを“公的に認めるための証明書」です。

精神疾患の場合は、
精神障害者保健福祉手帳 が該当します。

重要なのは、
👉 「能力の低さ」を証明するものではない
👉 「支援が必要な場面がある」ことを示すもの
という点です。

PSWとしては、
「困りごとを減らすための“道具のひとつ”」
と捉えてもらうことが多いです。


② 取得するメリット(実際によくあるもの)

● ① 生活面の負担が軽くなる

  • 公共交通機関の割引
  • 税金の控除・減免
  • 公共施設の利用料減免
  • 携帯料金の割引
  • NHK受信料の減免(条件あり)

「毎月少しずつ楽になる」 という声はとても多いです。

 ※詳細はお住いの自治体に確認することをお勧めします。


● ② 働く場面で“配慮をお願いしやすくなる”

  • 障害者雇用の選択肢が広がる
  • 勤務時間や業務内容の調整
  • 通院配慮の相談がしやすい

特に、
「体調に波がある人」 にとっては、
“説明し続けなくていい”安心感があります。


● ③ 支援や制度につながりやすくなる

  • 就労支援
  • 相談支援
  • 生活支援
  • 公的制度の説明がスムーズになる

支援者側も、
状況を前提として話ができるため、
ミスマッチが減ります。


③ 取得するデメリット・不安に感じやすい点

ここは、きれいごとを言わずに整理します。


● ① 「レッテルを貼られるのでは」という不安

とても自然な感情です。

ただ、現実的には
👉 手帳を持っていることを 自分から言わなければ他人に知られることはありません
👉 履歴書や日常生活で 必ず提示する義務はありません

「誰に、どこまで伝えるか」は
あなたが決めていいことです。


● ② 就職や転職で不利になるのでは?

これもよくある不安ですが、

  • 一般就労 → 手帳の有無は原則関係なし
  • 障害者雇用 → むしろ必要

つまり、
「不利になる」かどうかは、選ぶ働き方次第です。


● ③ 「一度取ったら一生?」という誤解

実際は、

  • 有効期限あり(更新制)
  • 状態が改善すれば更新しない選択も可能

👉 「一度取ったら戻れない」制度ではありません。


④ こんな人は「検討していいタイミング」

PSWとして、よくお伝えする目安です。

  • 体調の波が長く続いている
  • 仕事や生活に支障が出ている
  • 配慮なしで頑張るのが限界
  • 制度を使わずに我慢している
  • 「取ったほうが楽かも」と少しでも思った

👉 迷いが出ている時点で、検討してOK です。

「まだ早いかな?」と思う人ほど、
実は 使うことで楽になるケース も多いです。


⑤ 申請の“ベストな考え方”

✔ 取る・取らないは「戦略」

障害者手帳は
アイデンティティではなく、選択肢

  • 今は使わない
  • 必要になったら使う
  • まずは持っておく

どれも正解です。


✔ 迷ったら、相談してから決めていい

  • 主治医
  • PSW
  • 相談支援専門員

👉 「取ったほうがいいですか?」ではなく
👉 「今の生活で困っていること」を話すのがおすすめです。

その上で、
「手帳が役に立つかどうか」を一緒に考えれば十分です。


🌈 まとめ

障害者手帳は、
“弱さの証明”ではありません。

あなたがこれまで
必死に頑張ってきたこと、
困りながらも生活してきたことを、
社会が少し支えるための仕組みです。

  • 取らなくてもいい
  • 取ってもいい
  • 今決めなくてもいい

大切なのは、
👉 「一人で抱え込まないこと」
👉 「使える選択肢を知っておくこと」

あなたが少しでも楽に生きるための判断を、
心から応援しています。

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