#77 統合失調症があっても働ける?
仕事に戻りたい。でも、また体調を崩すのが怖いあなたへ

医療のヒント

「そろそろ仕事をしたいと思っています。」
「でも、また具合が悪くなったらどうしようって……。」

統合失調症の治療を続けながら、少しずつ生活が落ち着いてきたとき、ふと「もう一度働きたい」という思いが芽生えることがあります。 でも、その気持ちと同時に、「以前のように働けるだろうか」「また再発したらどうしよう」という強い不安も押し寄せてきます。

「働けるか」よりも、「自分に合った働き方」をどう探していくのか。今回は、統合失調症があっても自分らしく働くためのヒントを、精神保健福祉士(MHSW=PSW)の視点から一緒に整理してみたいと思います。

① 「働きたい」と「怖い」は、同時にあっていい

一度、病気で仕事を続けられなくなった経験があると、再び働くことが怖くなるのは当然です。「また迷惑をかけるかもしれない」「失敗したら立ち直れない」と考えてしまうこともあるでしょう。

でも、不安があるからといって、働きたい気持ちが弱いわけではありません。むしろ、👉 「もう一度働きたいと真剣に思っているからこそ、失敗するのが怖い」 のだと思います。「働きたいけれど、怖い」という矛盾した気持ちを、無理にどちらか一方へ決めなくても大丈夫です。不安を抱えたままでも、相談することから始められます。

② 以前と同じ働き方(フルタイム・週5日)に戻らなくてもいい

病気になる前は、週5日フルタイムで働き、残業もこなし、責任ある仕事をしていた。そんな真面目な方ほど、「以前と同じように働かなければ社会復帰とは言えない」と自分を追い込んでしまいます。

でも、病気を経験した今の自分に、以前と同じ働き方が合っているとは限りません。

  • 週5日ではなく、週3日から始める
  • 長時間ではなく、短時間の仕事を探す
  • 人とのやり取りが多い仕事から、自分のペースでできる仕事へ変える

👉 「前と同じように働けること」だけが、社会復帰ではありません。 今の自分の体力や特性に合った働き方を探すことも、とても大切な前進です。

③ 仕事を探す前に、「生活の土台」を確認してみる

働きたいと思ったとき、すぐに求人サイトを探し始める方もいます。でも、仕事を長く続けるためには、日々の生活の土台が安定していることが欠かせません。

  • 決まった時間に起きられるか
  • 通勤に必要な体力があるか
  • 疲れたときにしっかり休めるか
  • 困ったときにSOSを出せるか

すべてが完璧である必要はありません。「今ある力」と「支援があればできそうなこと」を、主治医やPSWと一緒に整理してみるための確認です。

④ 働くための支援(就労移行支援など)を利用する

「いきなり就職するのは不安」という場合は、就労をサポートする障害福祉サービスを利用する方法があります。

  • 就労移行支援: 一般企業への就職を目指し、体調管理や仕事のスキルを訓練する場所
  • 就労継続支援(A型・B型): 一般企業で働くことが難しい場合に、サポートを受けながら自分のペースで働く場所
  • ハローワーク / なかぽつ(就業・生活支援センター): 障害のある方の求人紹介や、生活面も含めた相談に乗ってくれる機関

「今の自分にどんな選択肢があるのか分からない」という段階から、こうした機関に相談していいのです。

⑤ 障害者雇用という選択肢と、配慮事項の整理

統合失調症のある方が仕事を探す際、👉 「障害者雇用(オープン就労)」 という選択肢もあります(一般に障害者手帳が必要です)。

障害者雇用では、「通院のための時間調整」「指示は口頭だけでなくメモでお願いする」といった必要な配慮を、職場と相談しながら働くことができます。これは「できないことを決める」働き方ではなく、👉 「自分が力を発揮しやすい環境を整える」働き方 です。

また、病気を伝えるにしても伝えないにしても、「統合失調症です」という病名だけでなく、「こういう配慮があると働きやすくなります(会社に貢献できます)」と具体的に整理することが大切です。

⑥ ご家族様へ。「いつ働くの?」がプレッシャーになることも

本人の体調が落ち着いてくると、家族は「親がいなくなったあとのために、そろそろ働いてほしい」と焦ることがあります。その気持ちは親心として当然のものです。

でも、本人がまだ不安を抱えているときに「求人は探した?」と急かすと、強いプレッシャーになってしまいます。「今、仕事についてどう考えてる?」「不安なことはある?」と、本人のペースに寄り添って話を聞くところから始めてみてください。

⑦ MHSWとして伝えたいこと。「働くこと」だけが回復の証ではない

精神科の現場にいると、「働けない自分には価値がない」と思い詰める方に出会います。働くことは、収入や自信を取り戻すきっかけになりますが、👉 働いていないからといって、その人に価値がないわけでは決してありません。

家で穏やかに過ごす。家族とご飯を食べる。趣味を楽しむ。そうした時間も、あなたの尊い人生を作っています。「働けるようになること」だけを、回復のゴールにしなくてもいいのです。

🌈 まとめ ―― あなたに合う働き方を、あなたのペースで

「もう一度、働いてみたい。」 そう思えるようになったことは、とても素晴らしい気持ちの変化です。

まずは自分がどんな生活を送りたいのかを考え、必要な支援について相談し、自分に合った働き方を探していく。週5日働くのが合っている人もいれば、短時間から始める人もいます。

大切なのは、誰かと同じように働くことではなく、👉 「自分が無理なく続けられる暮らし」 を見つけることです。 もし働き始めてうまくいかないことがあっても、それは失敗ではなく「自分に合う環境を知るためのデータ」になります。

あなたの人生は、働いている時間だけでできているわけではありません。焦らず、一歩ずつ、自分らしい暮らしを一緒に考えていきましょう。🌱

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