#78 「家族も疲れていい」―統合失調症の本人を支えるあなたへ。―
大切な人を支えながら、自分の人生も大切にしていい

医療のヒント

「もう、疲れてしまいました。」 そう言ったあとに、
「家族なのに、こんなことを言ってはいけないんですけど……。」 と、ボロボロと涙をこぼしながら、申し訳なさそうに言葉を続けるご家族がたくさんいらっしゃいます。

薬を飲んでいるか気になる。夜、眠れているか心配になる。 通院の付き添いや、生活の手伝いもある。また症状が悪くなったらどうしようと、常に緊張している。 「いつまで、この生活が続くんだろう。」 そう途方に暮れ、そんな気持ちを持ってしまった自分に「私は冷たい人間だ」と罪悪感を覚えることもあるでしょう。

でも、まずお伝えしたいことがあります。 👉 家族が「疲れた」と感じることは、本人への愛情が足りないという意味では絶対にありません。

今回は、統合失調症のあるご本人を支えているご家族へ向けて、「家族自身の人生を大切にすること」について、一緒に考えてみたいと思います。

① 家族は、いつの間にか「家族」ではなく「支える人(ケアラー)」になっている

本人の体調が悪くなると、家族の関心は次第に本人の状態へ向かっていきます。 「今日は眠れているだろうか」「薬は飲んだだろうか」 気づけば、自分の予定よりも本人の予定を優先し、自分の体調よりも本人の体調ばかりを気にしている。

いつの間にか、「親と子」「夫と妻」といった関係ではなく、👉 「支える人」と「支えられる人」として毎日を過ごしている。 そんな状態になっていないでしょうか。 もちろん、家族が本人を支えることには大きな意味があります。でも、その重い役割を、「家族だから」という理由だけで、たった一人で背負い続ける必要はありません。

② 「疲れた」と言えない家族の罪悪感

家族が限界まで疲れを感じていても、なかなか口にできないことがあります。 「本人が一番苦しいんだから、私が弱音を吐いてどうするんだろう。」 「家族なのに、一人になりたいなんて思ってはいけない。」

でも、その感情を否定する必要はありません。 👉 「大切に思っていること」と、「限界まで疲れていること」は、心の中に同時に存在していいのです。 本人を心配する愛情も本当。自分の時間が欲しいというSOSも本当。どちらか一方を否定して、自分をいじめる必要はないのです。

③ 本人と「物理的な距離」を取ることも、悪いことではない

毎日同じ家で暮らしていると、どうしても本人の様子が気になり、「薬は?」「何で外に出ないの?」と口を出してしまいます。本人からすれば「監視されている」と感じ、家族は「何度言っても分からない」と疲労困憊する。

そんなときには、👉 「物理的な距離」を意図的に取ることが、お互いを救う場合があります。 本人が自分でできることは、失敗してもいいから手を出さずに任せてみる。家族が一人で外出する時間(レスパイト)を作る。

「いつもそばで見張っていること」だけが、支えることではありません。お互いが息を詰まらせない安全な距離を探すことも、とても大切な関わり方です。

④ 家族自身の時間を、絶対に後回しにしすぎないでほしい

本人の体調が心配で、友人からの誘いを断ってしまう。 たまに趣味を楽しんでいても、「家で本人が苦しんでいるのに、私だけ笑っていていいのかな」と罪悪感に駆られてしまう。

でも、家族にも「自分自身の人生」があります。 好きな音楽を聴く。友人とランチをする。趣味を楽しむ。何もしない時間を過ごす。 👉 あなたが自分の人生を楽しむことは、本人を見捨てることではありません。 家族自身が心身ともに健康で、笑顔でいられることが、結果的に家庭内の空気を穏やかにし、本人の安心にもつながるのです。

⑤ 家族だけでも相談していい。同じ立場の家族とつながる

「本人が行かないから、病院には相談できませんよね?」という声もよく聞きますが、👉 家族だけでも、保健所や精神保健福祉センター、病院の相談員へ相談していいのです。 その際、「本人をどうすればいいか」だけでなく、「私自身が限界で疲れています」と、あなた自身のSOSを出してください。

また、家族会や家族教室に参加し、同じ経験をしている家族と話すことで、「苦しいのは私だけじゃなかった」と救われることもあります。自分に合った「感情の吐き出し口」を見つけてください。

⑥ 「親がいなくなったらどうなるの?」という不安への備え

長く本人を支えているご家族が最も恐れるのが、👉 「親亡き後」の将来の不安 です。 「私たちが死んだら、この子はどうなるんだろう。一人で生きていけるのだろうか。」

この不安に対して、今すぐすべてを解決しようとしなくても大丈夫です。まずは、「家族以外が支える仕組み」を知るところから始めます。

  • 経済的な柱となる「障害年金」の受給
  • 将来の住まいとなる「グループホーム」の見学
  • 地域で見守る「訪問看護」や「相談支援」の導入

👉 「家族がすべてを支える密室の生活」から、「地域の支援も使いながらチームで暮らす生活」へ。 その準備を少しずつ進めていくことが、最大の安心につながります。

🌈 まとめ ―― あなたもまた、大切にされるべき一人の人です

統合失調症のある本人を支えることは、きれいごとでは済まない、本当に大変な毎日の連続です。 心配になる日も、腹が立つ日も、「もう全部投げ出したい」と思う日もあるでしょう。

でも、そんな気持ちを持つ自分を「ダメな家族だ」と責めなくていいのです。 少し休んでもいい。誰かに相談してもいい。家族以外の人に支援を丸投げしてもいい。自分の好きなことを心から楽しんでもいい。

家族が自分の人生を大切にすることは、本人を見捨てることではありません。 これまで、本人のために自分の人生を後回しにして頑張ってきたご家族へ。

「もっと頑張らなければ」と自分にムチを打つ前に、👉 「自分も少し休んでいいかな」 と考えてみてください。 あなたは、単なる「支える人」ではなく、あなた自身が幸せになる権利を持った、大切にされるべき一人の人です。

本人の人生も、あなたの人生も。どちらも犠牲にしない暮らしを、私たち支援者と一緒に、少しずつ作っていきましょう。🌱

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