#06 「入院させたい」と「施設に入れたい」
~高齢者の医療・介護の相談先を迷わないための “地図”~

福祉のヒント

「これって病院に相談するべき?」
「それとも介護施設?ケアマネ?どこが正解?」
「親の状態が悪くても、どこに相談したらいいのかわからない…」

高齢者の支援に関わっていると、
ご家族からこうした悩みを本当に多く聞きます。

医療と介護はつながっているようで、
実は“相談先が違う”ことがよくあります。

でも大丈夫。
今日は、相談員としての経験と、
精神科PSWとしての現場視点を合わせて、

高齢者の「困った!」が起きたときに迷わないための“相談先の地図”
をわかりやすくお伝えします。


① まず知ってほしい「医療」と「介護」の境界線

医療も介護も、大事なのは 「今、何が問題か」 という視点。


✔ 医療が得意な領域

  • 急な発熱・脱水・ケガ
  • 意識がぼんやりする、転倒を繰り返す
  • 認知症の急な悪化(せん妄)
  • 薬の調整が必要
  • 寝たきりが急に進んだ

医療が必要な時は 主治医・病院・救急 が窓口。


✔ 介護が得意な領域

  • 食事・排泄・入浴が大変
  • 一人暮らしで生活が難しい
  • 認知症で見守りが必要
  • 家族の介護負担が限界
  • 手すり・ベッドなど環境調整が必要

“生活の困りごと”は 介護保険(ケアマネ・地域包括) が窓口。


② 今の状態で「どこに相談すればいいか」早見表

迷った時は、この地図を見ると一瞬で判断できます。


🟥 緊急性がある(命に関わる可能性)

救急(119)・病院・主治医

  • 意識がない
  • 呼びかけても反応が弱い
  • 発熱や脱水が強い
  • 呼吸がおかしい
  • 急に立てなくなった

🟧 体調が悪いが、緊急ではない

主治医・かかりつけ医院

  • 食欲がない
  • いつもよりぼんやりしている
  • 最近転びやすい
  • 物忘れが急に進んだ
  • ふらつきが増えた

🟦 生活の問題が大きい

地域包括支援センター(まずはここ)

  • 一人暮らしで心配
  • 家族が限界
  • デイサービスを使いたい
  • 施設入所を考えたい
  • ケアマネを探したい

地域包括は介護の総合窓口。
「どこに相談すべきかわからない」時もここでOK。


🟩 すでにケアマネがついている

ケアマネに相談

  • 施設を探したい
  • 介護サービスを増やしたい
  • ショートステイを使いたい
  • 在宅が限界

ケアマネは介護の“司令塔”。
生活の課題はまずここ。


🟪 認知症の相談をしたい

もの忘れ外来・精神科・老年科

  • 急な怒り
  • 夜間の徘徊
  • 幻覚・妄想
  • 生活が成り立たない

精神科PSWとしても、
認知症の家族支援は非常に相談が多い領域です。


③ 「入院が必要なのか」「施設が必要なのか」の見極めポイント


✔ 入院が必要なサイン

  • 医療的処置(点滴・検査)が必要
  • 急激な体調悪化
  • 意識や行動がおかしい
  • 自宅で安全に過ごせない
  • 主治医が入院を勧める

※「医療」が必要な状態。


✔ 施設入所(介護)が必要なサイン

  • 家族の介護が限界
  • 24時間の見守りが必要
  • 自宅での生活が難しい
  • 夜間のトラブルが多い
  • 認知症の行動が抑えられない

※「生活支援」が必要な状態。


④ 医療と介護は“どちらが先”ではなく“同時に動いていい”

相談員として現場を見てきて強く思うのは、
医療と介護は並行して使っていいということ。

例えば——

● 認知症が進んで生活が難しい
病院で評価しつつ、ケアマネで介護サービス調整

● 体調が悪くて自宅が不安
入院+退院後の施設を同時に検討

● 家族が疲れ切っている
ショートステイ+受診で状態を確認

医療が“治す支援”、
介護が“支える支援”。

どちらも大事で、どちらかだけでは不十分なことがよくあります。


⑤ まずはこれだけ覚えてほしい「迷わないための地図」


🔵 体のこと → 病院

🟢 生活のこと → 介護(地域包括 or ケアマネ)

🟣 判断に迷う時 → 地域包括に相談すれば間違いなし

地域包括支援センターは
“医療と介護の間に立つ案内役” です。

あなたが今抱えている不安を、
いちばん整理してくれる場所でもあります。


🌈 まとめ

高齢者の医療や介護は複雑に見えますが、
相談先が分かれば一気に整理されます。

大切なのは、

  • 医療と介護の違いを知ること
  • 迷ったらまず相談すること
  • 家族が一人で抱え込まないこと

あなたは今、親のために一生懸命動いています。
その思いだけで十分すぎるほど立派です。

どうか一人で背負い過ぎず、
支援の地図を使いながら、
少しずつ安心に向かって進んでくださいね。

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