#62 「何度気をつけても、また同じミスをしてしまう」
「努力が足りない」と自分を責め続けてきたあなたへ

医療のヒント

「また同じミスをしてしまった……。」
「次こそは絶対に気をつけようと誓ったのに。」
「どうして自分だけ、周りの人が当たり前にできる簡単なことができないんだろう。」

社会に出てから、こんな思いを一人で抱え続けていませんか。

学生時代は「少し忘れっぽい」「ちょっとマイペース」と言われることはあっても、大きな問題なく過ごしてきた。 それなのに社会人になってから、 ・同じミスを何度も繰り返してしまう ・メモを取っているはずなのに、大切なことが抜けてしまう ・「気をつけよう」と思うほど、緊張で頭が真っ白になる ・周りから「また同じことやってるの?」と呆れられる

そんな毎日が続き、 👉 「自分は社会人に向いていない欠陥品なのではないか」 👉 「ただ自分の努力や気合いが足りないだけなんだ」 と、自分を激しく責め続けている方は決して少なくありません。

まず、PSW(精神保健福祉士)として、一番強くお伝えしたいことがあります。 👉 あなたは、これまで十分すぎるほど、血の滲むような努力をして頑張ってきました。

この記事では、PSWとして多くの方と関わる中で感じてきたことをもとに、「頑張っているのに苦しい本当の理由」を一緒に考えていきます。

① 「気をつけよう」と思うほど、体が固まってしまう(過緊張)

「今度こそ失敗しないように。」 あなたのその気持ちは、誰よりも本物です。 でも、その思いが強くなるほど、 「また失敗したらどうしよう」 「また怒られて呆れられるかもしれない」 という恐怖や不安も極限まで大きくなります。

すると、脳がパニック(過緊張)を起こし、👉 本来ならできるはずの思考力まで低下して、頭が真っ白になってしまう ことがあります。 これは決して珍しいことではなく、脳の防衛反応です。「気をつけていない(怠けている)」のではなく、👉 「気をつけすぎて、心がすり減って苦しくなっている状態」 なのです。

② 子どもの頃は何とかなっていたのに、なぜ社会に出ると苦しいの?

「学生時代はそこまで困らなかったのに、なぜ大人になってから急にできなくなったんだろう……。」 相談現場でも、そんな声を本当によく聞きます。

実は、学校という場所は

  • 先生が予定や持ち物を教えてくれる
  • 時間割やルールが明確に決まっている
  • 困ったときに助けてもらえる「構造」がある

という、👉 非常に守られた環境 でした。 一方で社会に出ると、

  • 優先順位を自分で判断して決める
  • 複数の仕事を同時に進める(マルチタスク)
  • マニュアルにない「臨機応変な対応」や「暗黙の了解」を求められる

など、👉 脳のワーキングメモリ(情報を一時的に覚えて処理する、脳内の作業机) を激しく消費することが一気に増えます。 そのため、子どもの頃には環境によってカバーされていた困りごとが、社会人になって「大人の発達障害」などの形で初めて表面化することは、少なくないのです。

③ 「同じミス」ではなく、「同じ場面」で困っている

周囲からは、「あいつはまた同じミスをした、反省していない」と見えるかもしれません。 でも本人は、毎回 👉 「同じパターンの場面」 で困っています。

例えば、

  • 「電話を受けながらメモを取る」(聞くと書くの同時進行)
  • 「急に予定が変わる」(臨機応変なスケジュール変更)
  • 「複数のことを同時に口頭で頼まれる」(聴覚情報の処理)

こうした👉 「脳の特性的に苦手な状況」 に直面したとき、その場面になるたびに同じエラーが起きてしまいます。 つまり、 👉 「同じ失敗をわざと繰り返している」のではなく、「自分の脳が処理しきれない『同じ困りごと(バグ)』が繰り返し起きている」 のです。 この違いを知ることは、自分を責めないためにとても大切です。

④ 努力不足ではなく、「合わないやり方」で頑張り続けてきた

ここまで読んで、 「自分の特性は分かったけど、それでも社会人としてもっと努力すればできるはず」 と思う方もいるかもしれません。

でも、もし何年も血の滲むような努力を続けても、結果が出ずに苦しさが変わらないのであれば。 今あなたに必要なのは「もっと歯を食いしばって努力すること」ではなく、👉 「自分に合った方法(環境)に変えること」 かもしれません。

福祉の世界ではこれを👉 「環境調整」 と呼びます。

  • 電話対応が苦手なら、メールやチャット中心の業務に変えてもらう
  • 口頭の指示が抜けるなら、「必ずメモかチャットで指示をください」と職場に相談する
  • 一人で抱えきれないなら、就労支援などの支援機関を利用する

「自分の努力(気合い)」を増やすのではなく、「やり方や環境」を変えることで、見違えるように楽に働けるようになる方はたくさんいます。

⑤ 「自分を知ること」は、あきらめることではない

もし、病院で発達特性(ADHDやASDなど)が背景にあると分かったとしても、それは決して「あなたはできないダメな人です」という烙印ではありません。

それは、👉 「あなたがどんな場面で困りやすいかを知り、自分に合った『自分のトリセツ』を作るためのスタートライン」 です。 診断を受けるかどうかは、もちろん人それぞれで自由です。 でも、 👉 「そっか、私ができないのは怠けていたわけじゃなくて、脳の特性に合わないやり方で無理をしていたからなんだ。」 そう思えるだけでも、長年自分を責め続けてきた心が、すっと軽くなる方は少なくありません。

🌈 まとめ

子どもの頃から、 「もっと頑張ればできるはず。」 「気をつければ大丈夫。」 と周りから言われ続けてきた真面目な方ほど、大人になっても「できない自分が悪い」と自分を責める癖が深く残っています。

でも、もし今、「どうして自分だけ……」と苦しんでいるなら。 それは、努力や気合いが足りなかったからではなく、👉 「あなたにフィットするやり方を、まだ知らなかっただけ」 なのかもしれません。

あなたは今日まで、もう十分に、痛いほど頑張ってきました。 だからこそ、これからは「もっと自分を削って頑張る方法」ではなく、 👉 「自分の特性を知って、少し楽に生きる方法」 を探してもいいのではないでしょうか。

焦らなくて大丈夫です。PSWや支援者と一緒に探せば、あなたに合う「歩き方」は、きっと見つかりますよ。

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