「こんなにみんなで支えているのに…」
「退院するとき、あんなに泣きながら約束したのに…」
「どうして、また同じこと(借金、暴言、無断外泊など)を繰り返すの?」
これは、双極性障害(躁うつ病)のある方を支えるご家族から、実際によく聞く言葉です。 そして、その言葉の奥には、怒りだけではなく、👉 「これ以上どうしたらいいのか分からない」という深い悲しさと無力感 があります。
私もPSW(精神保健福祉士)として、同じようなご家族の涙を何度も見てきました。 そのたびに、一番にお伝えしたいと思うことがあります。
👉 本人は、あなたを裏切りたくて、繰り返したくて繰り返しているわけではありません。
この記事では、 ✔ 双極性障害で同じトラブルを繰り返してしまう理由 ✔ 家族が苦しくなる理由と限界 ✔ 少しだけ心が軽くなる「病気」との向き合い方 を、一緒に考えていきます。

① 病気が「脳のブレーキ」を壊してしまう
双極性障害では、気分が異常に高ぶる「躁(そう)状態」になると、👉 脳の「判断力」や「ブレーキをかける機能」が病気によって弱くなってしまいます。
例えば、
- 収入に見合わない高額な買い物をしてしまう(カードの限度額まで使う)
- 突然、大きな事業や計画を始めようとする
- 「自分は特別だ、絶対に大丈夫」と本気で思い込む
- 怒りっぽくなり、人が変わったように暴言を吐く
本人はその時、👉 「悪いことをしている」「人に迷惑をかけている」という感覚がマヒ しています。性格が悪くなったのではなく、病気が脳のブレーキを奪ってしまっている状態なのです。
② 「約束を忘れた」のではなく、「病気が勝ってしまった」
入院や療養を経て落ち着いたとき、 「もう絶対に浪費しません」 「お酒は飲みません、薬はちゃんと飲みます」 そう固く約束する方はたくさんいます。
そして、👉 その約束をしている瞬間、本人は100%本気です。嘘をついているわけではありません。
でも、再び病状の波がやってきて「躁状態」のスイッチが入ってしまうと、その約束を守る「理性」そのものが病気のパワーに飲み込まれてしまいます。 これは、本人の「意志の弱さ」や「だらしなさ」だけでは説明できない、双極性障害という病気の残酷な特徴 でもあります。
③ 一番苦しんで、後悔しているのは「本人」かもしれない
激しい躁状態の波が引き、うつ状態へと落ち込んでいくとき、 「何であんなひどいことを言ってしまったんだろう」 「また家族に大金を払わせてしまった、本当に申し訳ない」 と、病棟で声を上げて泣き崩れる方を何度も見てきました。
家族を裏切ってしまったという👉 強烈な罪悪感と自己嫌悪に押しつぶされ、「自分なんて生きていないほうがいい」とまで思い詰める 方もいます。 繰り返しているように見えても、本人の中では、その何倍も「絶望と後悔」を繰り返しているのです。
④ 家族が疲れ果ててしまうのも当然です
一方で、一番近くで支える家族も限界を迎えます。
期待しては裏切られ、その後始末(借金の返済や人間関係の修復)に奔走し、また少し期待しては、また崩れて…。 その終わりの見えない繰り返しです。
だから、👉 「何で!?もういい加減にして!」と怒りや憎しみが湧くのは、家族としてごく自然な感情であり、あなたが冷たい人間だからではありません。 それだけ、相手のことを大切に思い、必死に支えようとエネルギーを注いできた証拠(愛情の裏返し)なのです。
⑤ 「支えること」と「人生を背負うこと」は違う
ここは、ご家族に一番伝えたいことです。 相手が家族であっても、👉 本人の人生の責任(借金やトラブルの尻拭い)を、すべてあなたが背負う必要はありません。
家族がすべてのトラブルを解決してしまうと、本人が「病気による失敗」に気づく機会を奪ってしまうことにもなります(共依存のループ)。 訪問看護、相談支援専門員、デイケア、そして病院のPSW。👉 支援は、家族という密室だけで行うものではありません。 プロの第三者を間に挟んで、家族の負担を分散させることが絶対に必要です。
⑥ 「再発ゼロ」ではなく、「波を小さくする」という目標
双極性障害は波のある病気なので、「一生、絶対に繰り返さない(再発ゼロ)」を目指すと、お互いに苦しくなります。 大切なのは、👉 「再発の波をできるだけ小さくし、早く気づくこと」 です。
【家族で共有しておきたい早期サインの例】
- 睡眠時間が極端に短くなった(寝なくても元気と言い出す)
- 急に口数が多くなり、早口になった
- ネット通販の段ボールが増え始めた
「あ、波が来ているかも」というサインに家族や支援者がいち早く気づき、すぐに主治医に相談して薬を調整してもらう。この「早めの火消し」が、大きなトラブルを防ぐ最大のカギになります。
🌈 まとめ
「何でまた繰り返すの?」 その問いに対する一番の答えは、 👉 「本人の性格や意志ではなく、双極性障害という『病気』がそうさせているから」 です。
病気と本人は、同じではありません。 病気によって判断のブレーキが壊れてしまうからこそ、👉 本人だけを責めるのでも、家族だけが泣いて我慢するのでもなく、プロの支援者を巻き込んで「病気の波と付き合っていく方法」を作っていく ことが大切です。
もし今、「また同じことの繰り返しだ、もう疲れた」と限界を感じているなら、どうか一人で抱え込まないでください。 支えるご家族自身にも、休む場所と、誰かに支えてもらう時間が必要なんですよ。


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